脳動静脈奇形に対するガンマナイフ治療

脳動静脈奇形とは

胎生3週時に完成するといわれる動静脈の発生学的異常です。しかし、症状がとくになければ、みつからぬまま人生を全うされる方も実際多い疾患です。多くは、脳出血、てんかん、脳虚血にともなう症状にて発症しております。元来、年間自然出血率は2-4%(出血発症例は6%)と言われており、一生涯においては出血率は30%と高く、決して放置は得策ではありません。
脳動静脈奇形は流入動脈>ナイダス(本体)>導出静脈と3つのコンポーネントから出来ており、ナイダスより導出静脈への移行部が最も脆弱となっています。また、同部が本病態の主体箇所となっております。
動静脈奇形そのものは、動脈から静脈へのバイパス道路みたいなもので、有効な血液を脳組織に送ることはありません。ですので、除去してしまっても脳へは何ら被害をもたらしませんが、急に血流が変えてしまうことは、その後の脳出血や脳のむくみにつながり問題となってしまいます。

ガンマナイフの治療目的

できる限り 正常脳組織を傷めず、ナイダス本体を閉塞させる
ガンマナイフとは、ガンマ線を血管内被細胞へ集中高線量照射を行い、
3年ほどの年月をかけてゆっくりと閉塞させる治療です(硝子化変性)。
0.1mmの精度にて、周囲脳組織へ高い放射線量が当たらないよう安全を守ることができる、脳神経外科治療において、完治が狙える最も安全かつ有効な治療となっています。

ガンマナイフの適応

非出血例・手術困難例・機能局在の高い例が好適応!

  • 非出血症例(出血症例は一般に手術が優先される)
  • 場所が悪く手術による到達摘出が困難、もしくは大きさのあるもの。
  • 機能局在が高く、手術後に麻痺などの神経症状を出しやすいもの。

ガンマナイフの効果と合併症

完治可能。しかし、術後脳浮腫・出血の可能性は考慮する。
70-80%が一回の治療で消失可能。残りは再度のガンマナイフが必要となり、最終的に80-90%が完全消失へと至ります。しかし、半年後以降にガンマナイフにより、周囲正常脳に一過性の脳浮腫(脳組織間質に水がにじむようになる)を伴うことがあります(10-20%程度)。 静脈還流障害もしくは放射線障害がその原因と考えられています。その際に、場所により麻痺やてんかんなどの症状を呈することもあり、投薬が必要となる場合もあります。出血率に関しては、治療後1年間は自然出血率と変わりがありませんが、その後徐々に下がり始め、消失したときには0.4%まで下がります。

ガンマナイフ後の経過観察

脳動静脈奇形に対するガンマナイフ治療
脳動静脈奇形に対するガンマナイフ治療計画(図1)
(各球状照射野を腫瘍のみに配置し、脳への過照射を避ける)

定期的に受診を勧めます。緊急時はすぐに連絡を!
基本6か月毎の外来受診が必要であり、その都度、CTもしくはMRI検査が必要となります。人によっては治療後1-2週で脳浮腫に伴う症状(頭痛・めまい・麻痺・てんかんなど)が出ることもあります。半年後に見られる脳浮腫はそのまま改善し、次いで早い時期に閉塞が見られることもあります。しかし、2-3年以後にはじめて見られる脳浮腫は注意を要します。7-8年後にのう胞形成(水袋が脳にできる)をまれに認めることもあります。
将来に亘り不安なく受けてください:
当科では、安全第一を掲げており、大きさに関わらず「導出静脈=ナイダス移行部をターゲットとし、照射体積4ccに対し辺縁線量22グレイ」を基本に行い、一度もしくは必要であれば段階的治療を戦略で行っております(図1)。無理なく安全に完治へと向かわせたいと考えております。