聴神経腫瘍に対するガンマナイフ治療

聴神経腫瘍とは

聴神経が内耳道の底で2本に分かれた神経(蝸牛神経・前庭神経)のうち、前庭神経の鞘(さや)が腫瘍化したものです。これにより、蝸牛神経(聴力)と顔面神経は、それぞれ前方へ強く圧迫され、比較的弱い蝸牛神経が影響を受け、「音の聞こえの悪さ」が主訴となります。一方で、顔面神経も強く圧迫され引き伸ばされているため、外科手術を選択した場合に、聴神経のみならず顔面神経も影響を受け、「顔面麻痺」につながってしまうこともあるので、治療選択には慎重を要します。

腫瘍および神経機能チェック

  • 局在:KOOS(クース)分類(脳幹との位置関係):グレード1から4
  • 聴力:G&R(ガードナー&ロバートソン)分類:クラス1から5
  • 顔面:H&B(ハウス&ブラックマン)分類: グレード1から6

ガンマナイフの治療目的

できる限り 神経機能を保ち、大きくさせない(成長止める)
ガンマナイフとは、ガンマ線を腫瘍細胞に集中照射し、細胞内の遺伝子(DNA)を切断するための治療。その際に、各脳神経を0.1mmの精度にて高い放射線量が当たらないよう安全を守ることができる、脳神経外科治療において、最も神経機能を維持できる可能性が高い。
しかし、切り取るわけではないので、あくまでも治療目的は腫瘍をこれ以上大きくさせないことに尽きます。

ガンマナイフの適応

大きすぎないもの。かつ、神経機能をなるべく温存したい方。
局在でいえば、Koos グレード2-3 (1と4に関しては協議必要)。そして、顔面神経と聴力が保たれている患者さんが好適応となります。若い方は手術療法もしくは組み合わせ治療が一般に優先されます。

ガンマナイフの効果と合併症

大方コントロール良好。しかし、一時的に膨らみます。
95%以上で腫瘍の成長を止めることができ、大半が縮小傾向となります。しかし、6か月後にガンマナイフによる炎症性変化として一過性に腫瘍が膨らみます。 その際に、ふらつきなどを訴える患者さんが1/4ほどおられます。顔面麻痺は1%以下(時期未定)。聴力障害は20%近くに認められます。そのほか、三叉神経障害(顔面しびれ感)や水頭症(頭痛・嘔吐)が数%に併発し、シャント手術が必要となることもあります。

ガンマナイフ後の経過観察

5年までは定期的に受診を勧めます。緊急時はすぐに連絡を!
6か月毎に基本3年まで外来を受診していただきます。その都度、MRIが必要です。治療成果判定は5年後となり、長期に亘る観察が必要となります。ただし、急な症状の発現や変化があったときはすぐに連絡をしてください。投薬など初期治療により、症状改善が認められるケースが多いからです。放置は治るものも治らなくしてしまいます。

将来に亘り不安なく受けてください

最近では腫瘍外部への過照射をなるべくしないように工夫しています。これにより、強い癒着が防止でき、むしろ外科手術操作を有利にする可能性が高められます。また、腫瘍内部をより高く照射できる工夫をしています。これにより、腫瘍栄養血管をつぶし細胞壊死に追い込みます。さらに「悪性転化」の可能性はより低くなると考えています。